―2―
 日はどんどん沈んでいき、やがて山は闇に包まれた。
 それでもリナは無言で佇んでいた。
 この空気を壊したくないのだ。
 しかし、秋の山中、空気はどんどん冷えていく。
 寒がりな相棒の肌が少し青褪めているようにガウリイには思えた。
 ガウリイは落ち葉を踏みしめてリナに近づき、華奢な肩を両手で包み込むと、闇の中白く浮かび上がる項にそっと口づけた。
「あ・・・。」
 びくりとリナが震えるのに構わず、ガウリイはリナを背中から抱きしめた。
 帯があるため、緩い包容であったが、リナの心臓は早鐘をうち、呼吸ができなくなってしまう。
「冷えてるな。」
 耳たぶに微かに触れた唇でガウリイが囁いた。
 常と違うガウリイの様子にリナは慄いた。
 でも、ここで怯みたくはない。
「温めてくれるの?」
 寒さからでなく震える唇で問いかけると、ガウリイの手に力がこもり、身体をくるりと反転させられた。
とすっ
 軽い音をあげて、リナはガウリイの広い胸に倒れ込む。
 手を当てた胸板の厚さと熱さを今更実感しながらリナはおそるおそる顔をあげた。
 見下ろしてくるのは輝く蒼い瞳で、その見慣れぬ熱に魅入られる。
 形のよい薄い唇がゆっくりと開いた。
「リナが望むならいつでも。・・・望んでくれるか?」
 肩を抱きこんでいた手の一方が動いてリナの頬に添えられた。
 ざらりと優しく撫でる手にリナの背筋が甘く粟立つ。
 リナは目を瞑った。
「・・・望んでるかどうかくらい察しなさいよ。」
「ああ。」
 低い頷きと共に、さらりと冷たい髪が頬に触れた。
 唇が熱く覆われた。
 リナはゆっくりと力を抜いて、感じる熱に酔う。
 何度も触れ合わせ、幾度か長く押し付けて。
 ガウリイは甘い唇を堪能した。
 名残惜しく思いながらもゆっくりと唇を離すと、リナは赤い顔で大きく息を吐いた。
「温まったか?」
 問いかけると、潤んだ赤い瞳が睨むように見上げてきた。
「〜〜〜っ、だから、察しなさいって言ったでしょ。」
 強がる様子にガウリイは目を細めた。
「うん、まだ冷えてるな。」
 言って、大きく見開かれた紅い瞳を見つめながら唇を重ねる。
 絶えられず閉じられた輝きを愛しく思いながら、ガウリイも瞳を閉じた。

 しばし互いの熱に酔った後、帰途についた2人の手は宿に着くまで繋がれていたのだった。


 獏征様いかがでしょうか?お待たせした挙句、こんな駄文で申し訳ないです。
 一応『花見』の続きで甘め、今回は酒はないけどガウに頑張ってもらいました。
 後半短いのですが、雰囲気違うのでページを分けてみました。
(2005.12/3)