どれだけ好きだか あててごらん?
 町の喧騒も静まり、闇が世界を支配する時間。
 魔法によって生み出された光に照らされた宿の一室で、酒を酌み交わす一組の男女。
 華奢な肢体を大きめのパジャマで包み、両手で包み込むようにグラスを持ってちびりちびりと飲むのはリナ。
 依頼を果たして疲れているのか、いつもきらきらと輝く紅い瞳は閉じられかけている。
 彼女を愛しそうに見詰める蒼い瞳の主はガウリイ。ウィスキーをロックで飲みながら、ゆったりとした時間を楽しむ。
かくんっ
 栗色の頭が大きく揺れた。
「おいおい、リナ・・・。」
 苦笑を浮かべてガウリイはリナの手からグラスを取り上げる。それをテーブルに置いて、彼は少女の顔を覗き込んだ。
「リナ。」
「うみゅぅ・・・。」
 ガウリイの呼びかけに意味不明の声を発し、リナは薄目を開けたがすぐにとろとろと目を閉じてしまう。
「疲れたんだな。今日はもう寝たほうがいい。立てるか?」
「ん・・・、がうり、はこんで〜。」
 何とか目を開けようとしながら腕を投げかけてくるリナの身体を、ガウリイはゆっくり抱きしめた。
 普段は意地っ張りだが、酒が入ると甘える恋人の姿をガウリイは結構楽しみにしている。
 ふわりと栗色の髪が頬を掠め、甘く香る少女にガウリイはそっとキスをした。
 夢の世界に入りかけている少女はうっとりと笑い、ガウリイの胸に頬を摺り寄せた。
「ねぇ、がうり、あたしのことどのくらい好き?」
「ん〜、言葉で言うのは難しいな・・・。」
 突然問われて、戸惑うガウリイに、リナはえへへと笑った。
「あたしはね〜、こんくらい好きよ。」
 リナは両腕を広げて大きさを表現した。
 ガウリイはにこりと笑った。
「オレもこんくらい好きだぞ。」
 そう言って広げた両腕はリナよりも遥かに長い。そのことに不満なのか、リナは唇を尖らせた。
「ぜんぜん、がうりいの方がおっきいじゃない〜。」
 拗ねる様子があまりに可愛らしくて、くすくす笑いながらガウリイはリナを軽々と抱き上げた。
 リナはガウリイの首にしがみつきながら、耳元に囁きかけた。
「あたし、がうりのこと、あたしの頭のてっぺんから足の先ぐらいいっぱい好きよ。」
「ん、オレもリナのこと、オレの頭のてっぺんから足の先まで好きだぞ。」
「むぅ〜。」
 返された言葉にリナの頬が膨らんだ。
 標準よりも小柄なリナと馬鹿でかいガウリイ、軍配がどちらに上がるかは明らかである。
 拗ねたように窓を見たリナはガウリイの顔を振り仰いだ。
「ね、がうり、あたし、がうりいのこと、ここから月にいくくらい好きよ。」
 勝ち誇ったようにやや胸をそらして言うリナにガウリイはくすくす笑う。
「じゃ、オレはここから月に行って、ここに戻ってくるくらい好きだぞ。」
「ず〜る〜い〜。」
 恨めしそうに言うリナに、ガウリイは酔っ払い相手にムキになりすぎたかと反省する。だが、言葉などで言い表せないくらい少女が愛しくて仕方ないのだ。
 ベッドに優しく横たえてやると、一生懸命考え込んでいたリナの顔がふと曇った。
「リナ、どうした?」
 やっぱりいぢめすぎたかと反省しながら、ガウリイは優しく問いかける。
「がうり・・・。」
 見上げてきたリナの顔に微かに憂いが漂う。
 その表情に、リナを抱き潰してしまいたい衝動に駆られながら、ガウリイはリナの言葉を待った。
「あたし、がうりのこと、世界よりも大好きよ。」
 痛みと罪を抱えながら、リナが鮮やかに笑顔を浮かべた。
 ガウリイだけを求め、見詰める紅い瞳。
「リナ・・・っ。」
 堪らずガウリイはリナに口接けた。
「ん・・・っ、ふぁ・・・っぁん。」
 唇を優しく擦り合わせ、柔らかな下唇を弄り、そっと舌を挿しいれて、甘い唇を堪能する。
 魔法の明かりが消えた室内に、密やかな息遣いと湿った音だけが鳴り響く。
 やっとガウリイが唇を離したとき、リナの身体から力が抜け切り、そのまま彼女は眠ってしまった。
 ガウリイはリナの身体に優しく毛布を掛けてやり、それから屈み込んでその耳元に唇を寄せた。
「リナ、オレもリナがいれば世界なんていらないくらいリナを愛してるぞ。」
 甘く熱く囁いてから、ガウリイはリナの額にキスを落とした。
「おやすみ、リナ。」

       


  書いた後、エスプレッソか抹茶が飲みたくなりました。
  元ネタは絵本です。大きなうさぎと小さなうさぎの会話なんですけど・・・。
  聞いてる内に妄想が膨らんじゃって・・・。
(2005.2/25)